松の年間管理|黒松・五葉松の剪定・芽摘み・古葉取りの正しい時期と方法

松は日本庭園に欠かせない存在です。黒松・五葉松などは美しい樹形を保つために、年間を通じた適切な管理が必要です。
本記事では、松の剪定・芽摘み・古葉取り・施肥の基本的な年間管理を、季節ごとにわかりやすく解説します。


松の剪定をご説明する前に…

ワンポイントアドバイス

松の手入れは、慣れていないと手がチクチク痛くなりがちです。
特に古葉取りなどの細かい作業では、指先の感覚がとても大切。

そんなときに私が使用しているのが、親指・人差し指・中指の先だけをカットした手袋

私は、ワークマンやホームセンターで手に入る安価な手袋の指先部分を鋏でカットして使用しています。

この手袋なら、
・指先は素手感覚で細かい作業がしやすいです。
・手のひらや甲は保護されていてチクチク防止にも効果的です。
・また真冬の作業の寒さ対策にもなります。

🌸 春(3月〜5月)

✅ 観察と準備

  • 芽吹きの前後に全体の様子を観察
  • 芽摘み前の枝の勢い・芽の数をチェック
  • 強い剪定や古葉取りはこの時期は行わない

✅ 芽出し後の対応

  • 肥料は基本与えない
  • 必要があれば、芽が動く前に病害虫の予防散布を行う

🌿 初夏(6月)

✅ 芽摘み(みどり摘み)

時期:6月上旬が目安(新芽が伸び切った頃)

手順:

STEP

新芽(ろうそく芽)を確認する

①が「ろうそく芽」です。

STEP

3芽出ていれば真ん中の芽を根元から摘む(2芽を残す)

基本は中心の勢いの良いみどりを指でつまんでかきとります。

硬い場合は、鋏を使いキッチリ根元で切ります。

STEP

1芽しかない場合は2〜3cm残して折る

折る時に固い場合はハサミで切ります。

芽の切り方は、真横から切るのではなく、ハサミの刃先を枝に軽く差し込むようなイメージで、丁寧に芽を止めます。

STEP

茶色い粒状の「花芽」はすべて取り除く

みどり摘みの作業動画

🌱 芽摘みの目的は「樹形の調整」と「勢いの制御」。黒松では特に重要な作業です。


☀ 盛夏(7月〜8月)

✅ 基本管理

  • 徒長枝や枯れ枝の軽い整理のみ
  • 剪定・古葉取りは行わない(木が弱りやすい時期)

✅ 水やり・肥料

  • 根付いている松には水やり不要
  • 肥料も与えない(根腐れ・肥料焼けの原因になる)

✅ 病害虫対策

  • マツノマダラカミキリに注意
  • 樹皮にヤニ・穴・穿孔がないか定期的に確認

🍁 秋(9月〜11月)

✅ 古葉取り(10月〜11月上旬)

  • 前年に出た葉を手で1枚ずつ丁寧に取り除く
  • 当年の葉はそのまま残す
  • 風通しを良くし、病害虫の予防に繋がる

✅ 軽剪定

  • 樹形を崩さない範囲で、伸びた枝先を軽く切り戻す
  • 芽の位置を見て丁寧に剪定
実際の現場からの声

かつて昭和の時代には、松の手入れといえば「みどり摘み」「古葉取り」までを含めた本格的な剪定を、年に2回おこなうのが一般的でした。

しかし現代では、
・お庭の様式の変化
・ご予算の制約
といった理由から、「みどり摘み」や「古葉取り」を省いた簡易的な剪定が主流になっています。


「松は金食い虫」と言われる理由

実際、松の剪定には非常に手間と時間がかかります。
そのため、お得意様からはこんな声も聞かれます。

「松は金食い虫やからなぁ…」

従来のやり方を忠実に行えば、どうしても剪定費用は高くなります。
今では、できるだけ費用を抑えた剪定が求められる時代です。


現代の主流「鋏仕上げ(鋏打ち)」とは?

当社のお得意様の多くも、**古葉取りを省いた鋏仕上げ(鋏打ち)**での剪定を選ばれています。
ただし、鋏打ちでは古葉が残るため、見た目の美しさには限界があるのも事実です。


当社の工夫とこだわり

私たちは、
・ご予算内でできるかぎり美しい仕上がりに
・必要最低限ではなく、見た目にもこだわった剪定に

このバランスを大切にしています。

本格的な剪定は難しい…という方にも、「やってよかった」と感じていただける松の剪定をご提供しています。


❄ 冬(12月〜2月)

✅ 剪定

  • 強剪定は避ける
  • 弱った枝や徒長枝を軽く整理する程度
  • 1月中旬〜2月中旬は極力剪定を控える

✅ 寒肥(12月下旬〜1月中旬)

  • 枝先の真下あたり(根の先端部)に油かすを埋める
  • 黒松:やや多め / 五葉松:控えめに

✅ 観察ポイント

  • 枝枯れや樹皮の異常がないか確認
  • 剪定を控える理由:寒期は光合成が少なく、切り口の回復が遅いため

五葉松のお手入れは、丁寧さが大切

五葉松は、葉がやわらかく密に生えるため、黒松や赤松とは違った配慮が必要になります。
どちらかといえば**“切る”というより“飛び出ている部分を整える”感覚**での剪定が求められます。

特徴と注意点:

  • 葉はやわらかく密集しやすい
  • 成長は緩やかなので、剪定は年1回でも十分なことが多い
  • 内側に風が通るように軽く透かす程度が理想的
  • 芽かきや古葉取りは、葉が黄変する時期(晩秋〜初冬)に軽く行うのが望ましい

⚠ 五葉松の剪定で絶対に避けたい「強剪定」

五葉松は、見た目をきれいに整えたくても“強剪定”には向かない庭木です。
極端に言えば、「飛び出た枝を、つまんで切るだけ」くらいがちょうどいいのです。


✂ 五葉松は「刈り込まない」のが鉄則

  • 飛び出た枝だけを、植木バサミや芽切りバサミで“つまむように”剪定
  • 刈込バサミでバッサリ切るのはNG
  • 仕立て直しは効かず、失敗すれば何年も戻りません

❌ よくある失敗例

最近では、作業時間を短縮するために、刈込バサミで五葉松を一気に切ってしまう業者さんも見受けられます
しかしその剪定方法では…

  • 葉先が真っ赤に焼ける
  • 翌年には枯れ枝が多数発生
  • 切り口から異常に多くの芽が吹き、収拾がつかなくなる

という深刻なトラブルにつながります。


🕰 元に戻すには何年もかかる

刈り込みによって傷んだ五葉松は、元の姿に戻すまでに数年を要することもあります。
その間、形が崩れ、木にかかる負担も大きくなります。


✅ 五葉松剪定のコツ=「抑える」「整える」

年齢を重ねた木ほど、控えめな手入れこそが長持ちの秘訣
「切る」よりも「整える」ことを意識して、無理なく、自然に仕立てるのが五葉松と長く付き合うコツです。


💬 ひと言添えとして

時間がかかっても、少しずつ形を整えていく。
それが五葉松らしい“品格”を守る道です。

🔚 まとめ

松は見た目の美しさだけでなく、樹勢や健康を保つための年間を通じた地道な手入れが必要です。
芽摘み・古葉取り・剪定・寒肥、それぞれの作業を**「正しい時期に」「控えめに丁寧に」**行うことが、松を長く健やかに育てるコツです。

🌿 四季に合わせて、無理なく向き合いながら松と共に庭を育てていきましょう。