剪定(せんてい)という言葉には、どこか「形を整える」や「大きくなりすぎた枝を切る」といった印象を持たれている方が多いかもしれません。
しかし、私たち庭師の考える剪定とは、**枝を切ることが目的ではなく、“木の未来を整える作業”**です。
■ 剪定は「切る」ではなく「残す」ための作業
たとえば、混み合った枝を少し減らすことで風通しが良くなり、病害虫の発生を防ぐ。
あるいは、将来の樹形を考えて、今のうちに伸びすぎそうな枝を切っておく。
枝を切ること自体よりも、「どこを残すか」「どの方向に伸ばしたいか」を考えることが本質です。
■ 剪定のタイミングは“木ごとにちがう”
- 🌸 春に花が咲く木(梅・サクラ・ツツジなど)
→ 花が咲いた後すぐに剪定が基本です。 - 🌳 秋に紅葉する木や落葉樹(モミジなど)
→ 成長が落ち着いた冬に剪定が適しています。
「とりあえず夏に全部刈り込んでおく」といった方法では、花が咲かなくなったり、樹勢が弱ってしまうこともあるのです。
■ 庭師は“木の癖”を見て剪定する
同じ種類の木でも、植えられている場所や育ち方によって枝の出方や性格は違います。
たとえば、
- 日陰で育った木は徒長枝が多くなりやすく、
- 風の強い場所では枝が偏って伸びたりします。
だからこそ、庭師は「この木の育ち方にはどんな背景があるのか」を見て、今だけでなく数年先を考えて枝を整理しています。
■ 剪定でやってはいけないこと
- ✘ 枝を一気に切りすぎる
→ 木がショックを受けて弱ってしまうことがあります。 - ✘ 「刈り込みバサミ1本」で全部済ませる
→ 本来「枝抜き」と「刈り込み」は用途が違います。
本当に木のことを考えるなら、見た目だけでなく木の体力や再生力を見ながら整えることが必要です。
■ まとめ:剪定は「庭と会話する時間」
剪定は、単なる整枝作業ではありません。
風通し、日当たり、樹形、そして木がどう育ってほしいか……
それらを見ながら行う、木との会話のような時間です。
もし自分で剪定をするときも、ただ“切る”のではなく、
「どうしたらこの木が心地よく過ごせるか?」という気持ちで枝を見てみてください。
✅ 締めの言葉
庭木と向き合う中で、木のことを少しでも知ると、
お庭の風景がほんの少し違って見えてくることがあります。
この「お庭の豆知識」が、そんな小さな気づきのきっかけになれば嬉しいです。